
「事業拡大のために補助金を活用したい。でも、申請の手続きがあまりに複雑そうで足踏みしてしまっている……」
「コンサルタントに頼むと費用が高いし、かといって自分でやって不採択になるのも怖い」
中小企業の経営者様や個人事業主の方から、このようなお悩みをよく伺います。
補助金は、返済不要の資金を調達できる非常に強力な手段ですが、その申請プロセスは決して平坦ではありません。コストを抑えて自力で挑戦するか、費用を払ってプロに任せるか。この選択は、単なる費用の問題だけでなく、経営者の貴重な「時間」と、事業の「成否」に関わる重要な経営判断です。
本記事では、自力申請とコンサルタント依頼、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較し、あなたの会社がどちらを選ぶべきかの「明確な判断基準」を解説します。これを読めば、今の自社の状況に最適な選択肢が見えてくるはずです。
自力申請とコンサルタント依頼の比較表
まずは、自力で申請する場合と、コンサルタントに依頼する場合の主な違いを整理してみましょう。両者の違いは、単に「お金がかかるかどうか」だけではありません。
| 項目 | 自力申請 | コンサルタント依頼 |
|---|---|---|
| 金銭的コスト |
0円
(人件費を除く) |
着手金+成功報酬
(数10万円〜) |
| 作業時間 (経営者) |
100時間〜
(学習・作成・入力) |
10〜20時間
(ヒアリング・確認) |
| 専門知識の必要性 | 自力での習得が必須 |
不要
(プロが補完) |
| 採択率(合格率) | 平均より低くなる傾向 |
平均〜平均以上
(業者による) |
| 不備のリスク |
高い
(要件見落としなど) |
極めて低い |
| 精神的負担 | 非常に大きい | 軽減される |
一見すると、「自力申請」は費用がかからず魅力的に見えます。しかし、そこには「見えないコスト」が隠れています。それは、経営者ご自身、あるいは担当社員が費やす膨大な時間(人件費)と、本業が手薄になることによる「機会損失」です。
一方、「コンサルタント依頼」は、金銭的な支出は伴いますが、「時間を買う」ことによる本業への集中と、「採択率アップ」という結果を買う投資と言えます。
それぞれの要素について、より深く掘り下げて見ていきましょう。
時間的コストの違い
補助金申請を自力で行う場合、多くの初心者が想像する以上に膨大な時間がかかります。
まず、各省庁から発表される「公募要領」を読み込む必要があります。これは100ページ近くに及ぶことも珍しくなく、官公庁特有の難解な言い回しや、細かい要件がびっしりと書かれています。これを読み解くだけでも時間がかかります。
さらに、自社の強みや市場分析、収支計画を盛り込んだ「事業計画書(10〜15枚程度)」を一から作成しなければいけません。
初めて申請する場合、これらの作業にトータルで100時間以上費やすケースも珍しくありません。
通常業務が終わった後の夜間や、貴重な休日を返上してパソコンに向かい続けることになります。
対してコンサルタントに依頼する場合、経営者が行う主な作業は「ヒアリングへの回答」と「出来上がった書類の確認」、そして「必要書類(決算書など)の準備」のみです。
プロが要点を絞って質問してくれるため、合計10〜20時間程度で済むことがほとんどです。この圧倒的な時間差は、忙しい経営者にとって大きな判断材料となるでしょう。
採択率の違い
「うちは素晴らしい技術があるから、ありのままを書けば通るはずだ」
そう考えて自力申請をし、不採択になってしまう企業は後を絶ちません。なぜなら、補助金の審査は「技術コンテスト」ではないからです。
補助金の審査員は、短期間で大量の申請書を読み込みます。そのため、彼らが読みやすく、かつ「採択すべき理由(加点項目)」が明確に示されている計画書でなければ、高い点数はつきません。
プロのコンサルタントは、文章が上手いから採択されるのではありません。
「国の政策目的(賃上げや生産性向上など)といかに合致しているか」
「その事業にお金を出すことで、どのような経済効果(ROI)があるか」
これらを審査項目に沿って論理的に翻訳するスキルを持っているからこそ、採択率が高まるのです。また、公募回ごとに頻繁に変更される最新ルールや「隠れた加点要素」を熟知している点も、採択率に大きく影響します。
自力申請をおすすめするケース
ここまでコンサルタント依頼のメリットをお伝えしましたが、全ての企業が外部に依頼すべきわけではありません。以下の条件に当てはまる場合は、自力申請の方がメリットが大きいと言えます。
過去に採択実績がある企業
過去に「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」などに採択された経験がある企業は、自力申請のハードルがグッと下がります。
補助金の種類が違っても、基本的な申請の流れや、gBizID(電子申請アカウント)の操作方法、求められる事業計画の論理構成には共通点が多いからです。一度「採択されるレベルの書類」を作った経験があれば、そのノウハウを転用することで、効率的に申請準備を進めることができます。
また、採択後の「交付申請」や「実績報告」といった事務手続きの大変さも理解されているため、途中で挫折するリスクも低いでしょう。
社内に事業計画作成の経験者がいる場合
社内に、以下のようなスキルを持つ人材がいる場合は、自力申請を検討する価値があります。
銀行融資の稟議書や事業計画書の作成経験がある
経営企画室などで、論理的な文書作成や数値計画の策定に慣れている
公的文書の読解が得意で、事務処理能力が高い
このような社員がいる場合、経営者が一人で抱え込まずに済みます。
ただし、注意点があります。その社員が申請業務にかかりきりになることで、本来の業務(営業や開発など)がストップしてしまう「人件費コスト」を許容できるかどうかが鍵です。「外注費を払うより、社員の残業代の方が安く済む」という判断であれば、社内ノウハウを蓄積する意味でも自力申請は良い選択肢です。
申請金額が少額、または手続きが簡易な補助金
例えば「小規模事業者持続化補助金(一般枠)」のように、補助上限額が50万円程度の比較的少額な補助金の場合です。
もし50万円の補助金を得るために、コンサルタントに15万円〜20万円の報酬を支払ってしまえば、手元に残る金額はわずかになってしまいます。これでは何のために申請したのか分かりません。
申請書類の分量も比較的少ないため、費用対効果を考えると、この規模の補助金は「自力で頑張る」のが賢明な判断と言えるでしょう。
コンサルタント依頼をおすすめするケース
一方で、以下のようなケースでは、迷わずプロの力を借りることを強くおすすめします。
初めての補助金申請の場合
「公募要領を読んでも、何を書けばいいのかさっぱり分からない」
初めて補助金に挑戦する方の多くが、この壁にぶつかります。
補助金の世界には、「革新性」「付加価値額」「事業の優位性」など、独特な定義を持つ専門用語が飛び交います。これらの解釈を一つでも間違えると、せっかく良い事業計画であっても、形式的な不備(要件不適合)として、審査の土俵にすら上がれず「不採択」になってしまうリスクがあります。
初めての登山にガイドが必要なように、初めての補助金申請には「ナビゲーター」が必要です。複雑な手続きを先導してもらい、要件漏れを防ぐ安心感は、費用以上の価値があります。
本業に集中したい経営者向け
これが最も大きな理由かもしれません。
経営者にとって、最も貴重な資源は「時間」です。
もしあなたが、時給換算で1万円の価値を生み出す経営者だとしましょう。不慣れな書類作成に100時間を費やした場合、実質的に「100万円分の働き」を捨てていることになります。
その100時間を、新規顧客の開拓や新商品の開発、組織マネジメントに使っていれば、補助金額以上の利益を生み出せたかもしれません。
「書類作成という事務作業はプロに任せ、自分は経営判断と事業推進に集中する」。このように割り切って、機会損失を最小限に抑えたい経営者には、コンサルタント依頼が最適解です。
失敗しないコンサルタントの選び方と費用相場
いざ依頼しようと思っても、「怪しい業者に騙されないか」「いくらかかるのか」という不安があるかと思います。最後に、良いパートナーを見極めるポイントと費用の相場について解説します。
報酬体系の相場(着手金と成功報酬)
補助金コンサルタントの報酬体系は、一般的に「着手金」と「成功報酬」の二階建てになっています。
着手金:10万円〜30万円程度
作業を開始するための手付金です。もし不採択でも返金されないケースが一般的です。
成功報酬: 採択金額の10%〜15%程度
無事に採択された場合に支払う報酬です。
信頼できるパートナーの見極め方
信頼できるコンサルタントを選ぶためのチェックポイントは以下の2点です。
ヒアリングを重視しているか
ここが最も重要です。「丸投げでOKです、適当に書いておきます」という業者は避けましょう。
採択される強い事業計画書には、経営者の「熱意」や「事業への想い」が不可欠です。それらを引き出すために、じっくりと時間をかけてヒアリングを行い、社長の頭の中にある構想を言語化してくれるコンサルタントこそが、真のパートナーと言えます。
まとめ
助金申請を「自力」でやるか、「コンサルタント」に依頼するか。
この問いに対する答えは、あなたの会社の「社内リソース(時間・経験)」と「確実性への投資」のどちらを優先するかによって決まります。
自力申請:時間と労力はあるが、とにかく現金を節約したい。過去に経験がある。少額の補助金である。
コンサル依頼:本業が忙しく時間を無駄にしたくない。採択率(確実性)を高めたい。初めてで不安が大きい。
どちらが正解ということはありませんが、もし「本業を止めてまで書類作成をする余裕はない」「絶対にこのチャンスを逃したくない」とお考えであれば、専門家の力を借りるのが近道です。

なら!