
「数ヶ月かけて準備した事業計画書が、一枚の不採択通知で否定された」
補助金申請において、これほど辛い瞬間はありません。新事業進出補助金やものづくり補助金など、数百万円から数千万円規模の補助金は、企業の成長にとって大きな起爆剤となります。しかし、その競争率は決して低くはなく、採択率は回によっては40%〜50%程度、それ以下になることも珍しくありません。
多くの経営者様が「良い事業アイデアさえあれば通る」と考えがちですが、実は審査の現場では、アイデアの良し悪し以前に、書類上の不備や表現力の問題で落とされているケースが後を絶ちません。
本記事では、補助金申請の現場で数多くの事例を見てきた経験から、なぜ多くの企業が不採択となってしまうのか、その代表的な「5つの理由」を徹底解説します。さらに、高い採択率を誇るコンサルタントが、それらの課題をどのように乗り越えているのか、プロの視点による対策法もあわせて公開します。これから申請を考えている方、あるいは一度不採択になり再挑戦を考えている方にとって、必読の内容です。
不採択の主な理由トップ5
不採択になる申請書には、業種や規模を問わず共通する「不合格パターン」が存在します。審査員は短期間で膨大な数の申請書を読み込まなければなりません。そのため、「読み手への配慮がない」「要点が掴めない」計画書は、内容を深く検討される前に低い評価を下されてしまうのが現実です。ここでは、特に頻出する5つの不採択理由を深掘りします。
事業計画の具体性不足
不採択理由の中で最も多いのが、この「具体性不足」です。
多くの申請書で見られるのが、「最新の機械を導入することで生産性を向上させ、売上拡大を目指します」といった抽象的な記述です。経営者の頭の中には具体的なビジョンがあるのかもしれませんが、それが書面に落ちていなければ、審査員には何も伝わりません。
審査員が知りたいのは、「誰に(ターゲット)」「何を(製品・サービス)」「どのように(提供方法・販売ルート)」提供するのかという5W1Hです。例えば、単に「高齢者向けにサービスを提供する」ではなく、「半径5km以内の団地に住む70代以上の単身世帯をターゲットとし、〇〇という手法でアプローチする」といった解像度が求められます。
また、「なぜ自社なら成功するのか」という競合優位性(強み)の記載も不可欠です。「頑張ります」「努力します」という精神論ではなく、自社の保有する技術、ノウハウ、顧客基盤などが、新しい事業とどう結びつき、競合他社とどう差別化できるのか。ここが曖昧なままでは、事業の実現可能性が低いと判断され、不採択の烙印を押されてしまいます。
補助金の趣旨との不一致
どれほど優れたビジネスプランであっても、それが「補助金の目的」と合致していなければ採択されることはありません。これは「公募要領(ルールブック)」の読み込み不足に起因するミスです。
例えば、「ものづくり補助金」は革新的なサービス開発や試作品開発を目的としています。ここに「単に古くなった機械を同じ性能の新品に買い替えたい(更新投資)」という申請を出しても、革新性がないため対象外となります。また、「新事業進出補助金」であれば、思い切った事業転換や業種転換が求められているにも関わらず、既存事業の延長線上の取り組みを申請すれば、要件を満たしていないと判断されます。
国が補助金を出す背景には、必ず「賃上げを促進したい」「DXを進めたい」「海外進出を後押ししたい」といった政策的な意図があります。ご自身の事業計画が、その政策意図という「ストライクゾーン」に入っているかを確認せず、投げたいボールを投げているだけの申請書は、審査の土俵に上がることすらできません。
数値計画の甘さ・根拠不足
定性的な文章だけでなく、定量的な「数値計画」も審査の重要項目です。ここでよくあるのが、「根拠なき右肩上がり」の計画です。
補助事業実施後の3〜5年間の収益計画において、売上が急激に伸びているにも関わらず、その根拠が示されていないケースが散見されます。「なぜその売上になるのか」の説明として、「客単価〇〇円 × 想定客数〇〇人(平日・休日稼働率〇%)」といった積算根拠が必要です。
また、費用の見積もり甘さも指摘されやすいポイントです。導入する設備の価格が市場相場と乖離していないか、費用対効果(ROI)が見合っているかは厳しくチェックされます。さらに見落としがちなのが「減価償却費」です。高額な設備を導入すれば、当然ながら減価償却費が発生し、利益を圧迫します。これを考慮せずに利益計画を立てたり、逆に考慮した結果、大幅な赤字が続く計画になっていたりすると、「事業としての継続性・収益性に問題あり」と判断されます。
夢のある数字を並べるのではなく、現実的かつ論理的な数値の積み上げが求められるのです。
必須項目の記載漏れ
信じられないかもしれませんが、内容の良し悪し以前に「形式不備」で不採択となるケースも非常に多いです。これを「形式審査落ち」と呼びます。
公募要領には、提出すべき書類や、事業計画書に必ず記載しなければならない項目が細かく指定されています。例えば、「SWOT分析を行うこと」「実施体制図を記載すること」「市場ニーズを分析すること」などが求められているにも関わらず、それらの項目が欠落している場合です。
また、添付書類のミスも致命的です。直近の決算書が全て揃っていない、指定されたファイル名になっていない、労働者名簿の記載内容に不備があるなど、事務的なミス一つで数ヶ月の努力が水泡に帰します。
補助金は税金を原資としているため、手続きの公平性・正確性は厳格に求められます。「これくらい書いてなくても分かるだろう」という甘えは通用しません。公募要領は百ページ近くに及ぶこともあり難解ですが、一字一句見落とさない緻密さが求められます。
加点項目の取りこぼし
補助金の審査は、一定の点数以上なら全員合格という試験ではなく、予算枠の中での「競争」です。そのため、採択ラインギリギリの当落線上では、わずか数ポイントの差が合否を分けます。ここで勝敗を決するのが「加点項目」です。
多くの補助金には、「賃上げ計画の表明」「パートナーシップ構築宣言」「経営革新計画の承認」「健康経営優良法人の認定」など、政策的に推奨される取り組みを行う企業に対して加点を与える仕組みがあります。
不採択になる企業の多くは、これら「取れるはずの加点」を取りこぼしています。「準備が面倒だから」「知らなかったから」という理由で加点申請を行わないのは、非常にもったいないことです。
逆に採択される企業は、公募開始前からこれらの加点項目をリストアップし、計画的に取得しています。事業計画書の中身(基礎点)が同レベルであれば、加点を持っている企業が確実に勝ち残る。これが補助金レースの現実です。
コンサルタントによる採択率向上の具体策
ここまで不採択の理由を見てきましたが、これらを全て自社のみで完璧にクリアするのは容易ではありません。そこで、多くの企業が専門家(コンサルタント)を活用します。
しかし、優秀なコンサルタントの役割は、単なる「書類の代行作成」ではありません。彼らは審査の裏側を知り尽くした上で、事業計画そのものを「合格する計画」へと磨き上げます。ここでは、コンサルタントが行うプロのテクニックを紹介します。
審査項目ごとの戦略的記載
コンサルタントは、審査員が持つ「採点シート(審査項目)」を熟知しています。補助金の公募要領には「技術面」「事業化面」「政策面」といった審査項目が公開されていますが、コンサルタントは計画書を作成する際、これらの項目から逆算して文章を構成します。
具体的には、審査員が「技術面の優位性はあるか?」という項目をチェックしようとした際、計画書の該当箇所にその答えが明確に書いてあるように設計します。
また、単に項目を埋めるだけでなく、全体を一貫した「ストーリー」として繋げる技術も重要です。
「現状の課題(A)」があり、それを解決するために「本事業(B)」を行い、その結果として「理想の未来(C)」が実現する。このA→B→Cの流れに矛盾がなく、読み手がワクワクするようなストーリーを構築します。
さらに、審査員が拾い読みをする際に見つけやすいよう、見出しの付け方や太字の使い分け、図表の配置まで戦略的に行います。「読み手の脳内負荷を下げる」ことこそが、高評価を得るための最大の戦略であることを理解しているからです。
過去の採択事例を踏まえた計画設計
自社単独で申請する場合、参考にできるのは「自社の過去の経験」か「ネット上の断片的な情報」に限られます。しかし、コンサルタントは過去に関与した数十という膨大な「採択事例」と、逆に「不採択になった事例」のデータベースを持っています。
このデータベースを活用することで、その時々の審査トレンドに合わせた微調整が可能になります。
「前回の公募では、DXに関する記述が厚い計画が通りやすかった」「最近は、SDGsや脱炭素への貢献度が重視される傾向にある」といった、明文化されていない審査の「空気感」を計画に反映させることができるのです。
また、第三者視点による客観的なチェック機能も大きな価値です。経営者は自身の事業に対して思い入れが強いため、どうしても「これくらい説明しなくても分かるはず」という独りよがりな視点になりがちです。コンサルタントは、あえて審査員と同じ「全くの素人」の視点で計画書を批判的に読み込みます。
「この専門用語は一般的ではない」「この売上根拠は弱すぎて突っ込まれる」といった指摘を繰り返し、論理の穴を徹底的に塞ぐことで、誰が読んでも納得できる盤石な事業計画へと昇華させます。
まとめ
補助金申請で不採択になる理由は、主に「具体性不足」「趣旨の不一致」「数値根拠の甘さ」「記載漏れ」「加点不足」の5つに集約されます。これらは裏を返せば、この5つのポイントさえ押さえれば、採択の確率は劇的に向上するということです。
補助金の申請作業は、単にお金をもらうための手続きではありません。自社の強みを見つめ直し、市場環境を分析し、将来のビジョンを数値と共に具体化する、極めて質の高い「経営の棚卸し」の機会でもあります。
もし、ご自身での作成に限界を感じたり、絶対に失敗できない重要な申請であったりする場合は、今回ご紹介したような視点を持つ専門家のサポートを受けることも有効な選択肢です。
不採択の通知に落胆することなく、その原因を分析し、次回の申請では「審査員が唸る」ような完璧な事業計画書でリベンジを果たしましょう。確かな準備と戦略があれば、採択への扉は必ず開かれます。

なら!