メインの事業類型「成長枠」
事業再構築補助金の10次公募が始まっています。今回は大幅なガイドラインの変更となりました。
主要な事業類型である「通常枠」がなくなり、代わりに「成長枠」が新設されました。「通常枠」の要件であった「売上高等減少要件」がなくなり、売上が減少していることが条件であることが削除されました。
「成長枠」では「市場拡大要件」が新設され、「取り組む事業が、過去~今後のいずれか 10年間で、市場規模が 10%以上拡大する業種・業態に属していること」が必要となりました。
多くの事業類型
「市場拡大要件」は新しく取り組む事業が、成長産業であることが要求されるということです。新しく取り組む事業は、成長をしてる時流に乗った業種・業態であり、適切と思われる産業構造の変革を支援する、という考えがあるのだと思われます。
正論であり、正しいことだと思われますが、いわゆる停滞している業種・業態にいる事業者は見放されてしまうのでしょうか。
いいえ、そうではありません。事業再構築補助金は非常によく考えられている補助金であり、事業類型が「成長枠」以外にもあり下記のとおりとなっています。
「成長枠」、「グリーン成長枠」、「卒業促進枠」、「大規模賃金引上促進枠」、「産業構造転換枠」、「サプライチェーン強靱化枠」、「最低賃金枠」、「物価高騰対策・回復再生応援枠」
事業類型「産業構造転換枠」
今回はこのうちの「産業構造転換枠」にスポットを当てていきます。
「産業構造転換枠」の概要は下記のとおりです。
「産業構造転換枠」の概要
『国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築を支援』
「産業構造転換枠」の必要な要件は下記の4つです。
「事業再構築要件」「認定支援機関要件」「付加価値額要件」「市場縮小要件」
「産業構造転換枠」は今回新しく新設された事業類型で、要件に「市場縮小要件」があるのが特徴です。
「市場縮小要件」の詳細
「市場縮小要件」は
『現在の主たる事業が 過去~今後のいずれか 10年間で、市場規模が 10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態から別の業種・業態に転換すること』となっています。
公募要領から一部抜粋し、さらに詳しく説明すると下記のとおりです。
『現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間(※1)で、市場規模が10%以上縮小する(※2)業種・業態に属しており、当該業種・業態から別の業種・業態に転換する必要があります。事務局が指定した業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態であることを証するデータを提出し、認められた場合には対象となり得ます。
※1 期間については、過去10年の場合、コロナによる特異的な影響を除外するため、原則コロナ前である2019年までの期間としてください。コロナ後の期間を含んでいる場合でも、コロナによる特異的な影響を受けていないと考えられる場合(例えば、コロナ後に市場規模が急増したが、市場環境の変化によりそれが中長期的なトレンドであると考えられる場合)には可とします。
※2 業種・業態は、日本標準産業分類の小分類以下又はそれと同程度の粒度の業種・業態である必要があります。』
非常に複雑なので要約すると下記のとおりです。
「市場縮小要件」
現在の主たる事業が下記のどちらかに当てはまることが必要。
- 事務局が指定した業種・業態に属していること。
- 応募時に要件を満たす業種・業態であることを証するデータを提出し、認められること。
「産業構造転換枠」のメリット
前回のブログをご覧になられた方はお気づきだと思いますが、「成長枠」とその要件である「市場拡大要件」と、今回ご紹介した「産業構造転換枠」とその要件である「市場縮小要件」が対になっています。
基本の事業類型である「成長枠」には「市場拡大要件」を必要な要件として、新しく取り組む事業が成長産業であることを要求しています。ここまで制限を加えると、現在成長産業でない産業に位置する事業者が新しい事業を取り組むことに支障をきたす可能性があります。
そこで、別の事業類型である「産業構造転換枠」を同時に設け、現在成長産業でない業種・業態であることを示すことができれば補助金支援をする、というものです。
これも適正と考えられる産業構造の変化をもたらす施策であり、成長産業でない業種・業態に位置する事業者に、その業種・業態から転換する支援を行うものであると考えられます。
支援はさらに手厚く、補助率は中小企業等で「成長枠」が原則1/2なのに対し、「産業構造転換枠」は2/3となっています。
このように「産業構造転換枠」は成長産業に位置しない事業者を手厚く支援する取組みとなっています。
しかしながら、「市場縮小要件」の事務局が指定した業種・業態は、「市場拡大要件」のそれよりも現状はるかに少なくなっています。
そのため実際は、多くの申請者は、現在の主たる事業が、過去すなわち「2009年から2019年の10年間」、そして「今後の10年間」のいずれかで、日本標準産業分類の「小分類」または「細分類」のいずれかで、10%以上縮小している業種・業態であることをデータで説明し、そして申請時に認めてもらう必要があります。
「産業構造転換枠」はとても良い事業類型ですが、現状このように申請のハードルは非常に高くなっています。
しかしメリットも非常に多いので頑張って「産業構造転換枠」にチャレンジしてみませんか。