補助金コラム

補助金申請で失敗しないための事前準備チェックリスト

補助金

公募要領の確認ポイント

補助金申請の世界では、「準備が9割」と言っても過言ではありません。採択・不採択の明暗を分けるのは、申請ボタンを押す瞬間の熱量ではなく、それまでの泥臭い準備期間の質にあります。多くの経営者様が、締め切り直前になって慌てて書類作成に取り掛かり、公募要領の読み込み不足による要件不備や、書類の欠如に気づいて申請を断念するケースが後を絶ちません。

また、何とか提出できたとしても、準備不足の申請書は審査員に「実現可能性が低い」「制度を理解していない」と見透かされ、不採択の通知を受け取ることになってしまいます。本記事では、申請直前になって慌てないため、そして確実に採択を勝ち取るために必要な「事前準備」をチェックリスト形式で解説します。まずは敵を知ることから始めましょう。最初のステップは、補助金のルールブックである「公募要領」の完全理解です。

対象事業者の要件

まず最初に確認すべきは、「自社がそもそも補助金の対象になるのか?」という入り口の部分です。公募要領には必ず「補助対象者」の定義が記載されています。例えば、多くの中小企業向け補助金では「中小企業基本法」に基づく資本金や従業員数の基準を満たしている必要があります。製造業なら資本金3億円以下または従業員300人以下、小売業なら資本金5,000万円以下または従業員50人以下といった具体的な数値基準があります。

ここで見落としがちなのが、「みなし大企業」の規定です。自社の規模が小さくても、親会社が大企業である場合や、大企業の役員が自社の役員を兼任している割合が高い場合などは、実質的に大企業の支配下にあるとみなされ、補助対象外となるケースがあります。過去に別の補助金で採択されたからといって油断は禁物です。補助金ごとにこの「みなし大企業」の判定基準は微妙に異なるため、毎回必ず最新の公募要領で確認する必要があります。

また、業種による制限も重要です。風俗営業法の規制を受ける業種や、宗教法人、政治団体などは多くの補助金で対象外とされています。特に医療法人や社会福祉法人については、補助金制度によって対象となる場合とならない場合が分かれるため、ご自身の法人形態が対象リストに含まれているかを真っ先にチェックしてください。ここを間違えると、その後の努力がすべて無駄になってしまいます。

対象経費の範囲

次に重要なのが、「何にお金を使えるか(補助対象経費)」の確認です。経営者の方々がよく勘違いされるのが、「事業に必要なものなら何でも補助される」という思い込みです。基本的に、補助金は使途が厳格に定められています。

最も注意すべきは、「汎用性のあるもの」は対象外になることが多い点です。例えば、パソコン、タブレット、スマートフォン、一般的な車両などは、補助事業以外にも私的に使えてしまうため、原則として対象外です(IT導入補助金など一部例外を除く)。「せっかくだから社用車も買い替えよう」と考えて予算に組み込んでも、審査段階で否認されます。

また、経費が発生する「時期」も重要です。原則として、補助金の交付決定(合格通知後の手続き完了)を受けた後に発注、納品、支払いを行った経費のみが対象となります。「先に機械を発注してしまった」「手付金だけ先に払った」という場合、その経費は一切補助されません。さらに、小規模事業者持続化補助金では店舗の改装費や広告費がメインですが、ものづくり補助金では主に設備投資が対象で、広告費は対象外といった違いもあります。「あの補助金ではOKだったから」という経験則に頼らず、費目ごとの○×表をしっかり確認しましょう。

補助率と補助上限額

お金の計算において、「いくらもらえるか(補助上限額)」と「いくら自己負担するか(補助率)」のシミュレーションは、企業の資金繰り(キャッシュフロー)に直結する死活問題です。

補助金には「補助率」が設定されています。例えば補助率が「3分の2」で、300万円の機械を買う場合、国が出してくれるのは200万円、残りの100万円は自己負担です。さらに重要なのは、消費税は基本的に補助対象外であるという点です。つまり、実際には消費税分も含めた現金を先に全額支払う必要があります。

また、同じ補助金制度の中でも「枠」によって上限額や補助率が変わります。通常枠では上限1,000万円でも、大幅な賃上げを行う「賃上げ枠」や、インボイス対応を行うための特別枠などでは、上限額が引き上げられたり、補助率が優遇されたりします。自社がどの枠で申請するのが最もメリットがあるのか、要件(賃上げ率など)と比較検討する必要があります。

そして忘れてはならないのが、補助金は「後払い」だということです。採択されてもすぐにお金が入るわけではありません。設備を購入し、代金を全額支払い、実績報告をして検査に合格した後、ようやく入金されます。この間、数ヶ月から1年近くタイムラグが発生することもあります。その間の資金をどう手当てするのか、「つなぎ融資」の相談を金融機関としておくことも、重要な事前準備の一つです。

社内で準備すべき書類

「書類の不備」は、審査員が内容を見る以前に不合格とする「形式要件審査落ち」の最大要因です。どれほど素晴らしい事業計画を書いても、必須書類が一枚足りないだけで、あるいは印鑑が一つ欠けているだけで、審査の土俵にすら上がれません。特に取得に時間がかかる公的書類は、公募開始を待たずに、申請を決意した段階で準備を始めるのが鉄則です。ここでは、特にミスが起きやすく、早めの手配が必要な書類について解説します。

決算書・確定申告書

法人の場合は「決算書」、個人事業主の場合は「確定申告書」が必ず求められます。通常、直近1期分または2期分の提出が必要です。ここで注意が必要なのは、「表紙と貸借対照表、損益計算書があればいいだろう」という安易な判断です。多くの補助金では、「個別注記表」や「勘定科目内訳書」を含む、決算書の“全ページ”の提出が求められます。普段、税理士任せにしていて手元に簡易版しかない場合は、至急取り寄せなければなりません。

また、直近が赤字決算である場合も注意が必要です。赤字だからといって即申請不可になるわけではありませんが、補助金によっては「財務状況が健全であること」を加点項目としていたり、逆に債務超過の状態だと申請自体ができなかったりするケースもあります。赤字の場合は、事業計画書の中で「今回の補助事業によってどう黒字転換するか」をより説得力を持って記述する必要が出てきます。

さらに、創業間もなく決算期を迎えていない場合は、代わりに「開業届」や「履歴事項全部証明書」などで代替できる場合がありますが、これも特例措置の確認が必要です。電子申請(jGrants)の場合、紙の決算書をスキャンしてPDF化する作業も発生します。この際、ファイルサイズ制限に引っかかったり、パスワード付きで保存してしまって審査員が開けなかったりというミスも散見されます。地味な作業ですが、鮮明にスキャンし、適切なファイル名(例:第5期決算書.pdf)で保存しておくことも立派な事前準備です。

登記簿謄本・納税証明書

法務局や税務署で取得する公的証明書類には、厳格な「有効期限」があります。ほとんどの補助金申請において、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)や納税証明書は、「申請日から遡って3ヶ月以内に発行されたもの」である必要があります。半年前取得したものが手元にあるからといって、それを使い回すことはできません。申請のタイミングを見計らって、新しく取得し直す必要があります。

特に間違いが多いのが「納税証明書」の種類です。税務署が発行する納税証明書には「その1」「その2」「その3」などの種類があり、それぞれ証明する内容(納付すべき税額、所得金額、未納の税額がないこと等)が異なります。補助金によって求められる種類が違うため、公募要領を指差し確認してください。一般的には「その3の3(法人税と消費税に未納がないことの証明)」が求められることが多いですが、思い込みで取得すると無駄足になります。

また、税金の未納や滞納がある状態では、原則として補助金は申請できません。もし分納の相談などをしている場合は、完納してから申請するか、特例がないかを確認する必要があります。これらの書類取得は、窓口に行けば数十分で済みますが、郵送やオンライン請求を活用すれば移動時間を削減できます。マイナンバーカードやe-Taxの環境を整備しておくことも、スムーズな申請準備につながります。

見積書・カタログ

補助金申請では、購入予定の設備やシステムに関する「見積書」の提出が必須です。ここで最も重要なルールが「相見積もり(アイミツ)」です。国費を使う以上、その価格が市場価格として適正であるかを証明するために、原則として2社以上、場合によっては3社以上の見積書比較が求められます。「付き合いのあるこの業者にお願いしたい」と決めている場合でも、形式上、他社の見積もりを取得して比較検討した証拠を残さなければなりません。

見積書の内容にも注意が必要です。単に「機械一式 500万円」と書かれた見積書では、内訳が不明瞭として審査で弾かれるリスクがあります。「本体価格」「搬入設置費」「指導費」など、内訳が明確に記載されているか業者に確認してもらいましょう。また、見積書には「発行日」と「有効期限」が記載されている必要があります。審査期間中に有効期限が切れてしまうと問題になることがあるため、有効期限は長めに設定してもらうなどの配慮も有効です。

あわせて、導入する設備のスペックが分かる「カタログ」や「仕様書」も必要です。審査員は専門家ではないため、その機械が何をするものなのか、型番だけでは理解できません。カタログの該当機種にマーカーを引いたり、独自の仕様書を添付したりして、「まさにこの設備が事業に必要なのだ」と一目で分かるように準備しておきましょう。

計画策定で整理すべき情報

書類が完璧に揃っていても、肝心の「事業計画書」の中身が空虚であれば採択はされません。事業計画書は、審査員に対するプレゼンテーション資料です。「なぜこの事業をやるのか」「なぜ成功すると言えるのか」を論理的に説明するためには、頭の中にある構想を文字に起こし、客観的なデータで補強する必要があります。ここでは、計画書執筆の前に整理しておくべき3つの重要情報について解説します。

現状分析とSWOT

事業計画の書き出しは、必ず「自社の現状分析」から始まります。ここで役立つフレームワークが「SWOT分析」です。自社の内部要因である「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」と、外部環境である「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」を整理します。

多くの不採択事例で見られるのが、SWOT分析をしただけで終わっているパターンです。重要なのは分析結果をどう活かすかです。補助金申請においては、「自社の『強み』を活かして、市場の『機会』を取りに行く」という「積極戦略(クロスSWOT)」のストーリーを描くことが鉄則です。例えば、「長年培った精密加工技術(強み)」×「EVシフトによる部品軽量化ニーズの増大(機会)」=「新型の軽量部品製造ラインの導入(今回の補助事業)」というロジックです。

この分析を行う際は、独りよがりにならないよう注意が必要です。「うちは味が美味しいのが強み」と思っていても、顧客から見れば「提供スピードが早い」ことが選ばれている理由かもしれません。従業員や取引先へのヒアリングを通じて、客観的な自社の姿を棚卸ししておきましょう。

市場調査データ

「この商品は絶対に売れると思います」という経営者の勘や情熱だけでは、審査員を説得できません。その自信を裏付ける「客観的な証拠(エビデンス)」が必要です。計画策定の前に、必ず市場調査を行い、データを収集してください。

例えば、政府統計のポータルサイト「e-Stat」や、地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」を使えば、地域の人口動態や産業構造などのデータを無料で入手できます。また、業界団体が発行する白書や、矢野経済研究所などの民間調査データ、あるいはご自身で実施した既存顧客へのアンケート結果なども強力な武器になります。

「市場規模は拡大傾向にあるのか」「競合他社はどのような動きをしているのか」。これらを調査し、計画書にグラフや図表として盛り込みます。さらに、ターゲット顧客を「30代の女性」といった曖昧なものではなく、「〇〇地区に住む、共働きで週末に時短料理を求める30代の子育て世帯」といったレベルまで具体化します。ターゲットが明確であればあるほど、審査員は事業の成功イメージを持ちやすくなります。

数値計画の根拠資料

最後に、定性的な計画を「数字」に落とし込む作業です。補助事業実施後3〜5年間の損益計画(売上高、営業利益、人件費、減価償却費など)を作成します。多くの補助金には、「付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率平均3%以上増加させる」といった必須要件(KPI)が設定されています。この数値をクリアする計画を作ることは大前提ですが、単に数値を操作して辻褄を合わせただけの計画は簡単に見抜かれます。

審査員が最も厳しくチェックするのは「積算根拠」です。「なぜ3年後に売上が1.5倍になるのか」という問いに対し、「導入した機械により生産能力が2倍になり、既存顧客からの増産依頼〇〇件に対応可能になるため。単価〇〇円×月産〇〇個×12ヶ月=〇〇円」といったロジックが必要です。また、人件費の増加(賃上げ)や、設備投資による減価償却費の計上も忘れずに行う必要があります。これらを考慮してもなお、利益が出る構造になっているか。

数値計画は「絵に描いた餅」であってはいけません。過去の決算書の実績値と乖離しすぎていないか、業界平均と比較して異常な利益率になっていないかなど、実現可能性の高い根拠資料を整理しておくことが、採択へのラストワンピースとなります。

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